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第36回全国大会を考える (2002年7月31日)

大会総論最高の試合形式を築く論理を考える
何故 古川恭司五段はベスト四に残れなかったか ?

 古川恭司五段と下澤 猛四段 一昨年の第35回(2001年12月)全国大会の結果は第一位が江口慶貞五段、第二位が伊藤秀敏五段、第三位が古川恭司五段、第四位、真田英生五段であったが、昨年の第36回全国大会(2000年12月)では第一位、江口慶貞五段、第二位、伊藤秀敏五段、第三位、真田英生五段、第四位、下澤 猛四段であった。伊藤秀敏五段と並び受即攻技のトップである古川恭司五段が下澤 猛四段と入れ替わった形となった。近年常にベスト四に入っていた古川恭司五段の受即攻が下澤 猛四段の変化のある多彩な攻撃に対処しきれなかったのは応用力不足(?)という点で新たな驚きであるが、まずここから考えてみよう。しかしこの試合を調べると同じAコートでありながら古川恭司五段と下澤 猛四段は中位戦と上位戦での対戦は1回もなかったのである。最初に当たったのは「Aコートの選抜戦」で初めて対戦したことになる。受即攻に徹する古川五段と受即攻タイプでありながら突き・蹴りに多彩な攻撃技がある下澤四段が、Aコート選抜戦で、初めて対戦したことになるのである。最初両者睨み合っていたが、下澤四段が多彩な突き・蹴りで古川五段に次々と「効果・有効」レベルの攻撃を左右上下からする。ポイントで差が出たAコート選抜戦(ポイントは大会後ビデオ参照) 幾度か受けられ外されるが、一向おかまいなしで次々と攻撃をして効果・有効打(ポイント110点)をとる。一方古川五段は何本かは「受け・2拍子の受即攻」をするが「有効な受即攻」は出ず、さらにカウンターもなく間合いを近づいての1回の「有効」(ポイント20点)突きが出たのみであった。(ビデオ参照)古川五段からすれば中位戦、上位戦で1回以上は対戦し、相手の動きを熟知して、選抜戦に望めばポイント性ではないにしろこれだけ差をつけられずに済んだろう。しかし今回上位戦は非常に対戦数が少なく、中位戦でできなかったことが上位戦で試すチャンスがほとんどなく多くの選手から不満が出ていたように、相手の動きを熟知して、さらに高度な技を築くチャンスが上位戦ではほとんどできなかった。 古川五段も下澤四段と上位戦で対戦していれば変化の多い攻撃を上位戦で知り、選抜戦で対処する動きを考えることができたろうが、その機会もなくいきなり初めて選抜戦で対戦したのが、これだけ点数差ができた原因ではないだろうか。古川恭司五段の技術も課題があるが組み合わせ問題も課題がでた。古川恭司五段と下澤 猛四段戦から見える課題。

 
中 位 戦 、 上 位 戦 、 選 抜 戦 、 総 合 選 抜 戦 の 意 義 は
 無門会の大会は中位戦(5〜10試合)、上位戦(2〜5試合)、選抜戦(3試合)、総合選抜戦(3試合)と試合をこなしながら、粗い攻撃、未熟な攻撃、未熟な受即攻技に磨きをかけて次第に洗練された攻撃、受即攻技を最大限に引き伸ばそうとする試合形式であり、選手の技術構造も精神構造も磨きに磨きがかかった最高の試合が築かれるように10年、20年、30年(1975年開始)の歴史の流れで築いていったものである。 「判定はあるが勝ち負け無し」という試合は、選手が目先の勝敗にとらわれず、自分の信じる最高の技術を思う存分発揮し、どこまでそれが通用するか徹底的に試すことができ、また5〜10人の複数の選手と対戦することにより、多彩な攻撃、複雑な受け技を経験し、無駄な動きを無くし、有効な技術を徹底して育成する最高の試合形式を築き上げてきた。 中位戦の重要性は、現在の複雑に入り組んでいる空手、格闘技の複雑な動きを可能な限り認め、そうした動きに、選手達が慣れながらも、対処していき、やがて攻撃技・受即攻技・カウンターで効率よく倒そうとする方法を見いだそうとする位置にあり、上位戦は中位戦で高度に通用した技術ー例えそれがトリッキーな動きでも、無用のように見える技術でもある一定の水準にある攻撃であれば徹底的に認め、徹底的に披露してもらい、多くの選手にその技術に対処できる技術を試行錯誤して築いてもらうのである。ここ数年トップクラス、ベスト8に入り始めた九州福岡の山田啓祐三段、大阪神崎川支部の江田哲郎二段などは無門会空手と技術と過去の学んだ空手とうまく融合し、独特の動きを築いている。複雑な攻撃といってよいであろう。山田三段は「振り打ち」のような無門会空手が基本技術として指導している「上段逆突き」よりはるかに大ぶりな動きをして対戦相手に受けにくく、戦いずらい相手である。多くの有段者は激しい突きを食らったり吹き飛ばされたりした。また江田哲郎二段の金的攻撃から順突きへの連続二段攻撃も多くの有段者を苦しめた。江口慶貞五段も相当てこずった戦い方をしている。
 江口慶貞五段も大会後、無門会空手が応用力(複雑な攻撃)に対処できないならば弱い空手になってしまいかねない…と。だからこそ猫足立ち、後屈立ち、前屈立ち、他流派の奇抜な動きが必要なのである。

新 た な 上 位 戦 を 考 え る
 こうしたことを考えると選手は、特に選抜戦に残ろうとする選手は中位戦で戦うことができなかった相手とは上位戦で積極的に組むべきであることが分かる。なかなか完璧な組み合わせというのはできないが可能な限り役員が良く考えて組み合わせをすべきである。仮にどんな攻撃にも対処できる動きを中位戦で出来なかったら、上位戦でしなくてはならない。現在主審が中心で組み合わせが決定されているが、上位戦に選出された選手は自己申告カード(2〜3人)の対戦相手を希望し、主審と各コート責任者と大会会長と3者〜4者決定することが必要であろう。勿論短時間に決めなくてはならないという課題があるがこれも難しい問題ではない。特にスロースターターの選手は中位戦、上位戦で自分の流れを築かなくてはならない。

真 田 英 生 五 段 対 下 澤猛 四 段 は(中位戦、上位戦、選抜戦)
 真田英生五段×下澤四段戦は、中位戦、上位戦は下澤四段がポイント的にはやや有利だったのであるが、中位、上位で対処方法を築いた真田が、Aコート選抜戦では真田五段が90点、下澤四段が50点で有利に戦っている。「受け・受即攻型」の選手は相手下澤四段のように多彩な攻撃技の選手の場合には、数回対戦してから、複雑な中にある欠点を見抜いて、選抜戦では多彩な攻撃に対処できる最高の動きができる状態に仕上がっていたのは段階的な組み合わせが大切ということであろう。

 
 最 終 選 抜 戦 ベ ス ト 4 選 考 試 合 
 しかしAコート選抜戦では下澤四段にポイントで負けていたが、私の判断で古川恭司五段に再度のチャンスを与えようということで==江口慶貞五段(Bコート)、==真田英生五段(Aコート)、==伊藤秀敏五段(Bコート)は決定していたが「古川恭司五段×下澤 猛四段」戦を「最終選抜選考試合」ということで新たにポイント制度で戦ったところ「古川恭司五段(10点)×下澤 猛四段(70点)=下澤四段」という結果になり下澤四段が最終選抜戦に進んだ。

 
総 合 最 終 選 抜 戦 の 内 容 ポ イ ン ト 制 度 か ら 考 え る
 最終選抜戦は中位戦、上位戦、コート選抜戦で総試合数15試合前後こなした選手が、最終的に最高度の技術を出し合って技を出し切る試合であり、「単純・複雑な攻撃技、複雑な受け、2拍子・1拍子受即攻技、二重・四重のカウンター技」のその年の至上の戦いをする最終の技である。ゆえに「事実上は真剣勝負的ポイント制度自由組手大会」と同じである。しかしポイント制度自由組手大会と違うのは点数にこだわらない最高の試合を築くためにポイントを数えないこと、そして「4分間」フルに自由に戦いポイントでは100点をいくら越えようが無関係に思いの限り存分に戦い切り、自分の現在の地点と、限界地点を知ることができるのである。ひいては無門会空手の現在の最高地点と限界地点が確認できる試合であり、最高の空手の「理想の空手」築く「完成過程」を認識する重要な試合である。




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